肺癌とイレッサについて

8. 自己免疫力アップのために

イレッサは癌細胞を殺しません。増殖を抑えるだけです。

そのため、癌細胞の自然死を待つか、そうでなければ、自分の免疫力で癌細胞を殺さなくてはいけません。

また、いずれ癌細胞はイレッサに対する耐性を身に着けて増殖し始めますので、そのときに備える意味でも、自己免疫力をアップしておく必要があります。

自己免疫力アップのために、私は、以下の2つを実施しています。

  • 2013年3月30日(土)から、週に1度だけ、約1時間、ゆっくりジョギングをしています。
    私は、ジョギングを始めてから、風邪をひきにくくなり、かつ、花粉症が治りましたので、適度な運動は免疫力のアップとその正常化に効果があると実感しています。
    また、免疫力アップ以外に、屋外で紫外線を浴びることにより、抗癌ホルモンと呼ばれるビタミンDが増えることも期待しています。
    ただし、肝臓に負担をかけすぎないように、疲れすぎないように注意しています。
  • 週に1度だけ、熱い風呂に10分間浸かるようにしています。
    ヒートショックプロテインを増やすと言われていますが、効果のほどは分かりません。「良いと言われているからやってみよう」という感じです。

ただし、自己免疫力をアップしても、肺癌の癌細胞を異物とみなして殺すように免疫機能が動作しないと意味がありません。私は、過去5年間、風邪らしい風邪を引いたことがありません。したがって、自己免疫力は十分にあったと考えられます。また、かつては花粉症だったのですが、それが治ってから久しく、免疫機能は正常に動作していたとも考えられます。それでも肺癌を発症したということは、私の免疫機能は、肺癌の癌細胞を異物と見なさなかったと考えられます。なんとか、私の免疫機能が肺癌の癌細胞を異物と見なすように、指名手配犯のモンタージュ写真を作らなくてはいけません。そのために有効と考えられているのが、肺腺癌用のワクチンです。現在開発中と聞いており、私の肺癌の癌細胞がイレッサに対する耐性を獲得するまでに開発されることを願っています。

癌細胞がイレッサに対する耐性を獲得するのではなく、始めから微妙に異なる変異をする癌細胞がいて、それが生き残るという説もあります。

それから、たとえ免疫機能が癌細胞を殺すように動作しなくても、イレッサの副作用で最も恐れられている間質性肺炎の発症を防ぐ上で、自己免疫力をアップしておくことは無駄ではありません。間質性肺炎はインフルエンザをきっかけとして二次的に発生する可能性があるため、私は毎年、インフルエンザの予防接種を受けているのですが、そのワクチンの効きは、自身の免疫力が強いほど良くなるためです。以下に、2013年11月22日の朝日新聞の記事を転載します。

高齢者はインフルエンザのワクチンを打っても注意が必要――。昨季のインフルで流行の8割を占めたH3N2型は、免疫力の低い場合はワクチンがほとんど効かなかった可能性のあることが、国立感染症研究所などの研究でわかった。ワクチン作製の過程で起きるウイルスの抗原の変化が特に大きかったため。今季は昨季に比べ改善されたが、変化の度合いは依然大きい。「ワクチンを打ったからと楽観するのは危険」と専門家は言う。
インフルワクチンは鶏の卵の中でウイルスを培養して作るが、その過程で抗原が変化する。一般的にその変化が元のウイルスに対し8倍以上になると、効きが悪くなる傾向がみられ、32倍を超すとほとんど効かないとされる。H3N2型はここ数年、ワクチンが実際の流行株との反応性の低い状態が続いている。
感染研が昨季のワクチンをフェレットに打ち抗体を作り、流行株との反応性を調べたところ、全て8倍以上の変化で、うち74%は32倍以上。海外の高齢者を対象にした研究では、予防効果は10%未満だった。今季のワクチンも93%が8倍以上変化したが、32倍以上は1%にとどまったという。

2013年4月11日(木)

2013年1月頃からずっと右目の端が赤く、痒みがあり、放置しているだけでは治りませんので、眼科を受診しました。

確かに炎症を起こしているのですが、イレッサの副作用ではなく、恐らく細菌性によるものと診断され、フルメトロン点眼液が処方されました。

5月2日(木)

呼吸器内科を受診しました。

特に気になることもありませんので、通常通りイレッサを処方してもらい、終わりました。

6月20日(木)

血液検査を実施し、呼吸器内科を受診しました。

GOTが21、GPTが20。正常値範囲内で安定しています。

7月4日(木)

この1週間前頃から、左胸の乳首の下あたりに、ゴムの幕を張ったような張りを感じるようになりましたので、いよいよ再発したかと思い、急遽呼吸器内科を受診しました。

胸部CT

再発が疑われるようなものは見られません。

2013年7月4日の胸部CT画像

血液検査

GOTが20、GPTが21。正常値範囲内で安定しています。その他、再発が疑われるような数値は見られません。

張りの原因は、手術の影響による肋間神経痛と診断されました。なぜ今頃神経痛が発症したのかは不明です。放置していずれ消えるのを待つことになりました。

8月29日(木)

血液検査を実施し、呼吸器内科を受診しました。

GOTが20、GPTが19。正常値範囲内で安定しています。

7月4日に肋間神経痛と診断された胸の張りは「変化無し」で、良くも悪くもなっていませんが、再発によるものではないと考えられ、引き続きこのまま放置して様子をみることとなりました。

イレッサの育毛効果に関し、頭頂部の写真を提供することとなりました。イレッサの製薬会社のアストラゼネカは、副作用を懸念し、育毛薬の開発に関して、あまり乗り気ではないそうです。

10月10日(木)

イレッサを服用し始めてから1年経過しました。
胸部X線写真を撮り、血液検査を実施し、その結果を元に呼吸器内科の診察を受けました。

胸部X線写真

手術痕はかなり薄くなり、胸水も溜まっておらず、その他再発の兆候は見られません。手術時には確かに、胸膜に転移の結節が幾つか見られ、その結果胸水が溜まり、その胸水にも生きた癌細胞が観測されました(悪性胸水)ので、現在の状態は「イレッサにより癌がきちんと抑えられている状態」と考えることができるとのことです。ただし、イレッサでは癌細胞を死滅させることができず、少量の癌細胞が冬眠(dormant)状態で雌伏している可能性が非常に高いと考えられるため、現在の状態に安心せず、癌細胞がイレッサに対する耐性を身に着けて活動を再開するまでは、イレッサを服用し続けることが必要です。また、癌細胞がイレッサに対する耐性を身に着けても、全ての癌細胞に耐性ができるわけではないようなので、最近では「癌細胞が耐性を身に着けて活動を再開した後も引き続きイレッサを服用する効果はある」という考え方が支持されるようになってきたそうです。すなわち、完治するか、あるいは、死ぬまでイレッサを服用し続ける必要があるということのようです。ある意味「薬物依存症」ですね。

2013年10月10日の胸部X線画像

血液検査

GOTが22、GPTが22。正常値範囲内で安定しています。

その他

7月4日に肋間神経痛と診断された胸の張りは「相変わらず」です。原因不明で気持ちが悪いですが、放置することとなりました。

ここ1カ月ぐらい、ずっと喉の奥の上のあたりが軽く痛い状態が続いています。熱やその他風邪の症状は見られませんし、期間が長いので、風邪ではなさそうです。イレッサの副作用として具体的に列挙されてはいませんが、「皮膚や粘膜に現れる諸症状はイレッサの副作用と考えられる」との診断です。

肺癌の手術を受けてから1年が経ち、胸部には再発の兆候が見られませんが、他の臓器・脳・骨への転移が心配です。
EGFRの遺伝子変異がある肺癌が他の臓器などへ転移した場合、その癌にもEGFRの遺伝子変異が見られ、イレッサが効くそうです。そのため、胸部に再発の兆候が見られず、「イレッサにより癌がきちんと抑えられている状態」と考えられる場合は、他の臓器などで癌細胞が成長しているとは考えにくいとのことです。
ただ、脳には血液脳関門という機能があります。血液から脳細胞に取り込まれる物質と取り込まれない物質があるのです。一般的な抗癌剤は「取り込まれない」ため、脳腫瘍には一般の抗癌剤は効きません。そのため、脳腫瘍は放射線治療が一般的になっています。イレッサはどうでしょう。呼吸器内科の先生によれば「分からない」そうですが、「イレッサは肺癌からの転移性の脳腫瘍に効くという報告も幾つか見られる」とのことです。

10月27日(日)

手賀沼エコマラソン(ハーフマラソン)を2時間14分25秒で完走しました。かつては、同コースを1時間32分37秒で走っていましたので、レースとしては決して満足できる結果ではありませんが、一時は「二度とハーフマラソンやフルマラソンを走ることはあるまい」と考えていましたので、回復という点では非常に満足しています。

11月21日(木)

血液検査を実施し、呼吸器内科を受診しました。また、インフルエンザをきっかけとして、イレッサの副作用のうち最も懸念される間質性肺炎が発症する可能性があるため、インフルエンザの予防接種を受けました。

GOTが22、GPTが21。正常値範囲内で安定しています。

7月4日に肋間神経痛と診断された胸の張りは相変わらずですが、生活に支障があるわけではありませんので、このまま放置です。

イレッサを服用し始めてから1年以上が経過し、1年前と比較して、副作用の度合いが変わってきています。

  • 発疹は非常に小さくなり、目立たなくなりました。
  • 手足のにきびは、今冬も昨冬と同程度に見られます。
  • 便の後半が軟便となる症状にも軽減が見られます。
  • 育毛効果は頭打ちないしは後退の傾向が見られます。

総合的に判断して、副作用が軽くなってきていると考えられます。その原因として、以下の2つが考えられます。

  • 癌細胞だけでなく、正常細胞も耐性を獲得する。
  • イレッサを代謝する機能が向上し、イレッサの成分ゲフィチニブの血中濃度がすぐに低下してしまう。

ここで特に気になるのは後者です。一般に、イレッサを服用してから1年以上経過すると、イレッサが効かなくなり、癌細胞が再び増殖し始めます。その原因として「癌細胞がイレッサ耐性を獲得するから」と言われていますが、実は、イレッサを代謝する機能が向上し、有効成分の血中濃度が薄くなってしまい、癌細胞が冬眠状態から目覚めてしまうのではないか、と考えたためです。そうであるとすると、副作用が軽くなったことは、喜ばしいことではなく、由々しき前兆ということになります。この点を呼吸器内科の先生に伺いましたが、「副作用が軽くなった原因は分からない。」とのことでした。そもそも、イレッサが癌細胞に効くメカニズムは分かっているが、副作用が現れるメカニズムは分かっていないのだそうです。また、イレッサの有効成分ゲフィチニブの血中濃度を測定するのも難しいのだそうです。したがって、実際に癌が再増殖し始めるまで服用し続けるしかない、とのことです。

ここでもう一つ、疑問が生じました。イレッサは、癌細胞の中のチロシンのリン酸化をブロックすることにより、癌細胞の増殖をブロックします。もし、このブロックが一度作用すれば外れないのであれば、全癌細胞のチロシンのリン酸化をブロックするに十分の量を服用すれば、それ以上服用する意味は無いのではないか? という疑問です。この疑問に対し、呼吸器内科の先生は、「恐らく、一度ブロックしてしまえば、そのブロックが外れることはないだろう。しかし、全てに行き渡っていると保証することはできない。もうあなたの場合、十分な量を服用しているかもしれないけれど、やめるリスクはある。」また、「(イレッサを服用する量とは関係の無い話だが)イレッサが耐性を獲得するメカニズムとしては、そもそもイレッサがリン酸化をブロックできない癌細胞があり、それが生き残るのではないか、という説がある。」とのことでした。

12月3日(火)

PET(於ゆうあいクリニック)

手術ならびにイレッサの服用を開始してから約14ヵ月が経過しました。自覚症状は全くありませんが、再発ないしは転移が疑われますので、新横浜のゆうあいクリニック(下の写真)で2度目のPETを受けました。

前回(2012年8月15日)は「薬剤が全身に行き渡るように、薬剤を注射してから検査直前まで排尿を我慢して下さい」と言われましたが、今回は「いつ排尿しても構いません」と言われました。そこで、薬剤を注射してから40分後と1時間後(検査直前)に排尿し、検査に臨みました。検査結果は前回同様、大森赤十字病院の私の担当医師宛に送られます。

検査着に着替える更衣室で、子供の声がしました。振り返ると、小さい男の子が検査着に着替えています。小児癌と思われます。付添いのお父さんと目が合いましたが、かける言葉も無く、ただ会釈しかできませんでした。神様もむごいことをします。いや、神様なんていないのでしょう。

ゆうあいクリニック
12月19日(木)

大森赤十字病院の呼吸器内科で、PETの結果の報告を受けました。

臨床情報2012年9月左上葉S3の20mm大の肺癌術後、胸膜播種あり stageⅣ.イレッサ投与中。
所見

F-18 FDGの投与量は189.4MBq、投与時の血糖値は86mg/dlでした。

前回PET(2012.8.15)と比較しました。

今回のPET検査上、左中肺野付近への集積はごく軽度であり、再発を疑う明らかな異常集積は認められません。SUVmax=0.8です。

リンパ節転移を疑う明らかな異常集積は認められません。

左腸骨への集積が前回より増強しています。SUVmax=2.8です。転移の可能性があります。この他、遠隔転移を疑う明らかな異常集積は認められません。

画像診断局所再発やリンパ節転移を疑う明らかな異常集積は認められません。
前回と比べて、左腸骨への集積が増強しており骨転移の可能性があります。このほか、遠隔転移を疑う明らかな異常集積は認められません。
コメントお手持ちの画像所見とあわせて、御検討下さい。ご依頼ありがとうございました。
PET画像

上記の通り、腸骨への転移の可能性があります。ただ、集積が薄く小さいため、呼吸器内科の先生は「どのようにして転移か否かを判断すれば良いのか分からない」とおっしゃいますので、整形外科を受診し、まず「どのようにして切り分けるか」から相談することとなりました。

腸骨以外は大変きれいです。ただし、生理的な集積が濃く見られる脳や尿路系への転移の有無は分かりません。また、前回の経験から、精度の点で、胸膜播種の有無も分からないと考えられます。

脳はブドウ糖の一大消費器官であるため、PETの薬剤が集積してしまいます。また、余分な薬剤は尿から排泄されるため、撮影前にトイレに行って排尿しても、尿路系は写り込んでしまいます。それから、PETの画像とMRIの画像を比較すると分かる通り、PETでは数ミリ程度の癌細胞は分かりません。実際、手術前のPETでは集積が見られなかったのに、手術で胸を開いたら胸膜に結節が幾つも見られたように、胸膜の結節を検出するほどの精度は期待できません。

PETとは関係ありませんが、イレッサが本当に効いているのかどうかを判断する上で重要な疑問「悪性胸水をステージⅣに分類するのは妥当か」を呼吸器内科の先生にぶつけてみました。呼吸器内科の先生によれば、従来は、悪性胸水は確かに遠隔転移とは考えられず、ステージⅢbに分類されていたそうです。しかし、悪性胸水のある患者さんの生存率が悪く、ステージⅣに近いため、ステージⅣに分類することになったのだそうです。したがって、現在の私の状況は「明らかな延命効果が見られ、イレッサが効いている」と考えられるとのことです。

12月20日(金)

PETで左腸骨に集積が見られるため、整形外科を受診しました。

まずは、腰部のX線写真を撮影しましたが、予想通り異常が見られませんので、次週25日にMRI検査をすることになりました。

病院からの帰路、いきなり雹混じりの豪雨に見舞われ、ずぶ濡れに。その後も雨は降り続き、雷までなり始める始末。朝、家を出るときに確認したWeather Newsでは、そんなことは一言も書いていなかったのに。Weather Newsを信じて豪雨に見舞われたのは、これで2度目なので、もはや情状酌量の余地はありません。あっさりアプリを削除してしまいました。最近の天気予報の当たらなさが象徴しているように、世の中の専門家と言われている人たちを盲信せず、自分で判断することが重要ですね。

12月25日(水)

腰部MRI

同じ断層撮影でも、骨に関しては、CTよりもMRIの方が良く映ります。難点は、体内に金属がある場合は使用できないことと動作音が非常に大きいことです。金属探知機を当てられて、金属が無いことを確認した後、ドーナツ状の超伝導磁石の中に身を委ねます。装置外では、ドックンドックンという心臓のような音がずっと鳴っています。装置が動作し始めると、ドーナツ状の部分から、ヒュンヒュンヒュンやズンズンズンというような回転音が体に響くような音量で鳴り響きます。確かにうるさいのですが、電車で眠くなるのと同じ原理なのか、いつのまにか眠っていました。検査の最後で体を細かく揺するような振動がしばらく続き、そこで目が覚めました。15分ぐらい経過していました。

12月26日(木)

前日の腰部MRIの結果に関し、整形外科を受診しました。

確かに左腸骨に異常が見られます。しかし、手術前の2012年8月24日に撮影した腰部MRIの画像を見ると、同じ位置に同じ大きさで異常が見られます。1年以上大きさが変わっていないことから、肺癌が転移したものではなく、もっと前の「古傷」が石灰化したもので、それが今回何らかの原因で軽く炎症を起こしているのだろう、と診断されました。PETは炎症を起こしている部分に薄く集積するのだそうです。

2013年12月25日に撮影した腰部MRI画像

ただ、念のため、経過観察対象として、次回(2014年1月23日)は、呼吸器内科の前に整形外科を受診することとなりました。

2014年1月23日(木)

まず、整形外科を受診しました。

PETを受けてから約1カ月半経ちましたが、PETで軽い集積が見られた左腸骨付近に痛みなどの異常が感じられませんので、集積は骨転移によるものではないと判断されました。

次に、血液検査を実施し、呼吸器内科を受診しました。

血液検査に関しては、GOTが22、GPTが19と正常値範囲内で安定しており、また、他の指標に関しても異常は見られません。

また、整形外科の所見から骨転移は無く、生理的な集積が見られる脳と尿路系、ならびに、精度上検出できない胸膜の結節を除いては、PETで視認できる癌細胞は無いことになり、経過は極めて良好と判断されます。

イレッサの副作用に関しても、生活に支障があるもの、あるいは、命にかかわるものは無く、むしろ、体幹の発疹がほとんど見られなくなるなど、1年前と比較して軽くなってきています。

したがって、これまで通り、何らかの異常が見られるまで、イレッサを隔日服用し続けることとなりました。